
ご挨拶
医療技術の高度化・医薬分野の発展にあわせて、より高度なスキルをもつ薬剤師を養成するため2006年度に薬学部の薬剤師養成コースが4年制から6年制に移行しました。これに対応して、6年制コースの卒業生を受け入れより高度な薬学教育を実施する4年制博士課程が各大学に設置されました。その一方で、研究者を養成するための薬学部4年制コースも残っていますが、その割合は多くはありません。したがって、有機化学や生命科学に跨る基礎学術基盤を修得し、創薬研究・開発を推進する人材の養成が手薄となっています。このような背景から、本学理・工・農学の各分野で培われてきた創薬に繋がる学術基盤を融合し、独自の多分野融合創薬科学教育・研究を実践する創薬科学研究科が2012年に設立されました。本研究科では、広く理・工・農・薬学を専門とする学部卒業者を受け入れ、専門領域のみならず創薬科学に関わる幅広い知識を修得し、次世代の創薬科学研究を先導する人材(創薬基盤研究者)を養成しています。
本研究科には、理・農・工・薬学の異なるバックグラウンドをもつ教員が、「創薬有機化学」・「創薬生物科学」・「創薬分子構造学」の各大講座を構成しており、多分野融合教育・研究を可能としています。同時に設置されました細胞生理学研究センター(CeSPI)とは、設立当初から密接に連携して教育・研究を実施して参りました。同センターの教員は、本研究科大学院教育を兼担するとともに、「創薬分子構造学」の一研究グループとして大学院生を受け入れています。
健康・医療と密接に関係する創薬科学研究の波及効果は幅広く、本研究科の創薬基盤研究の成果と、有機化学・生物科学・分子構造学の多分野融合教育を通して輩出される人材には、社会から大きな期待が寄せられており、修了生の進路は医薬関連企業に加え、化学関連、食品・健康・医療関連など多岐にわたります。
近年の医薬品開発においては、小分子医薬品に加え、抗体・ペプチド・核酸等の多様なモダリティーが開発対象となっており、創薬科学研究の領域も必然的に広がっています。本研究科設立から10年以上が経過しましたが、最新の創薬科学研究に対応するため、ますますの充実を図っていきたいと考えておりますので、今後もご支援を賜りますよう心からお願い申し上げます。
創薬科学研究科長
山本 芳彦