最近の創薬科学をとりまく新しい潮流として、アカデミア創薬への期待と、創薬プロセスにおけるオープンイノベーションの枠組み導入の流れがあります。2003年にヒトゲノム解読完了が宣言されてから、次世代シークエンサーの登場、ゲノム工学における新技術の確立、次世代医薬品(抗体医薬)の市場拡大、高度化・個別化する医療への期待など、創薬科学の世界は日進月歩です。その最先端の研究開発を実現するためには、大学と産業界の壁を越えた、産学連携による技術交流・人材交流が必須である、と私たちは考えます。特に、高度に専門的な創薬プロフェッショナルを育成するためには、企業における医薬品開発の現場におけるニーズや問題点をいち早く捉え、それを教育カリキュラムに迅速にフィードバックするしくみが必須です。創薬科学研究科は、より多くの産業界の方々との産学連携をお待ちしております。
当研究科の教員・研究室と共同研究をしたい、あるいは技術交流をしたい、という場合には、上記の産学官連携ユニット、または、創薬科学研究科事務室にまで、まずご相談ください。名古屋大学には、連携体制や必要となる費用の違いに応じて、(1)技術相談、(2)共同研究、(3)受託研究、(4)受託事業、(5)寄付講座、(6)産学共同研究講座、の6つの枠組みが整備されています。詳細については、併せて本学の産学官連携本部のホームページ をご覧ください。
当研究科は、最先端の創薬科学研究拠点として、中部地域の中核を担い、先端医療と医薬関連産業の両方の振興に貢献したいと願っております。そのためのひとつの取り組みが、「中部地区 創薬コンソーシアム・総合医療イノベーションクラスター(仮称)構想」です。名古屋産業科学研究所(中部TLO)と密接に連携しながら、医薬連携・産官学連携・大学間連携の三つの連携を活動の柱として、愛知県を中心とする中部地区に創薬コンソーシアム・総合医療イノベーションクラスターの設立を目指します。それにより、加齢に伴う諸種疾患の予防手段としての機能性食品素材の探索や、創薬研究の実践を通して即戦力になる人材の育成を通じて、創薬研究の実績の社会への還元を目指します。
本研究科は、長い歴史を持つ名古屋大学の理学研究科・生命農学研究科・工学研究科の、多くの研究・教育の実績を継承し、それらの分野を横断的に融合する創薬科学研究を行う機関として設置されました。従って、創薬リード化合物、分子触媒および反応・天然物合成・人工核酸・分子遺伝学・タンパク質改変と翻訳語修飾・細胞生物学・細胞工学・生物情報処理/統計学・電子線解析や溶液NMRを基盤とする構造生物学・構造生理学・神経薬理学など、幅広い領域に属する技術シーズを保有しております。詳細は、研究室紹介のページから、各研究分野の研究情報をご覧ください。今後、研究科の有する技術シーズのデータベース を整備し、より円滑な産学連携体制の充実に努めていく予定です。