インライン分析、自動合成

 マイクロフロー合成法の高速混合と流路内の化学種を分析するインライン分析法を組み合わせることで、フラスコを用いた手法では取得困難な、例えば二つの溶液を混合して0.1秒後の化学種のスペクトル情報を得ることが可能です。この情報を通してこれまで知ることのできなかった有機化学の世界を覗くことができます。私達はこれらの手法を駆使した有機化学のより深い理解も大切な研究目的としています。

t-ブトキシカルボニル化のための求電子剤のマイクロフロー合成
 t-ブトキシカルボニル化は有機合成化学において頻用される反応ですが、求核剤の反応性が低い場合、導入効率が低下することが問題でした。高い求電子性をもつ反応剤を用いれば解決できるのですが、脱炭酸等を伴う分解が起きやすくなります。そこで私達は、t-ブトキシカルボニル化のための高い反応性をもつ不安定な求電子剤をマイクロフローリアクター中で発生させて、分解が起こる前に望む反応に利用する方法を開発しました。また、この研究では下図に示す通り、不安定な求電子剤のインラインIR測定による検知を報告しています。

Org. Process Res. Dev. 28, (5), 1971-1978 (2024).

ワンフロー三成分連結反応
 私達は、マイクロフロー三成分連結法とマイクロフローペプチド環化法を組み合わせた環状RGDペプチドの合成を報告しましたが、その報告の中で、ワンフロー三成分連結反応において生成すると想定される中間体や副生成物のインラインIR測定による検知も報告しています。このようにして反応機構を確かめるとともに、副生成物の生成回避に向けた条件検討に役立てています。

ChemistryEurope 4, (6), e70326, (2026).

液相ペプチドフロー自動合成合成装置の開発とインラインNIR分析
 フラスコを用いた合成法と比較して、比較的操作数が少ないためマイクロフロー合成法は自動化に適しているといわれています。下記の論文では、国内の企業との共同研究で世界初となる液相ペプチドフロー自動合成合成装置とインラインNIR分析による世界初のペプチド鎖伸長のモニタリングを報告しました。

React. Chem. Eng. 6, (4) 863-870, (2023).